生まれ変わりがあるとしたら


(ウメとタァ坊)

この数年間、わたしはずっと猫の
絵を描いていた。

すでに亡くなってしまった飼い猫
いま一緒にすごしている猫たちを
モデルにして絵を描いていた。

先日、ウメという飼い猫が亡くな
った。
はじめてだった。
もう猫の絵は、描けないと思った
のは。

猫の絵を描きはじめてからも、何
匹かの猫をみとっていた。
むしろ亡くなってしまった猫たち
を描きたいと思っていた。

そんなに売れていたわけではない
が、時どきまれに肖像画の依頼も
あった。
猫という生き物が大すきで、ずっ
と描いていたいと思っていた。

ウメが亡くなってわかったことが
あった。
わたしが猫の絵を描いていた本当
の理由だ。

病気になってから、ウメとわたし
の生活は今までとは変わってしま
った。
わたしはなんとか元気になってほ
しいと、ウメをなだめながら、ご
はんをあげていた。
ウメのストレスにならないように
気をつけていたつもりでいた。
でもにウメは、ごはんの時間にな
ると、しだいにベットの下に隠れ
はじめるようになった。
時には震えているときもあった。
でも今あげなければ、ウメはこの
まま弱って死んでしまうかもしれ
ない。
でもそれは、ただ自分がつらい
思いをしたくないから、嫌がるウ
メにごはんをあげているだけなん
じゃないか。
自問自答のくりかえしだった。

亡くなる前の夜は、ウメの早くな
る呼吸や、時どき弓のように体を
そらし、うめく声をそばで聞いてい
た。
亡くなり、かたくなったウメをみ
て、ウメじゃないような気がした
でもウメなんだとおもって、かな
しくなった。

ウメを火葬して骨になったあとも
ウメがどこにいるのか、わからな
くなってしまった。

ある日、なにげなく売れのこって
いたウメの絵をみたとき、
「あ、ウメだ」とおもった。

その時、わたしはウメをおもいだ
した。
いっしょにいたときの匂いのよう
なものを。

わたしが猫の絵を描いていたのは
この瞬間のためだった。
いっしょにすごしていた猫たちと
どんなふうに過ごしていたかをお
もいだすためだ。

このために、わたしは描いていた
のだとおもった。

もし生まれ変わりがあるとしたら
困る。
いままで一緒にすごした猫たちに
会えなくなるからだ。
でも、もし生まれ変わるとしたら
わたしは、植物になりたい。
猫の食べる草になれるから。

そう思って、わたしは植物の絵を
描きはじめた。

いままでわたしの猫の絵を買って
いただいた人たちにも、絵をみた
時やさしいきもちになってくれた
ら幸いです。


(葉っぱシリーズ落ち葉)

      

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする